「ソルは僕が足止めするから、皆はこの庭から森に入って、そのまま港に向かって。歩き続ければ一日とちょっとで着ける筈だから」
「一日とちょっと・・・か」
休憩に立ち寄った筈の村では結局休めず、そろそろ太陽は真上に達する。正直疲れていた。

「アール。疲れてるのは分かるけど、今は早くここから出ないと」
「わ、わかってる」
アールは、力の抜けた輝の袖を引っ張り、マニの教えてくれた細道へ入っていった。

リアーネは、引っ張られながら歩く輝の隣に並び、聞いた
「輝、行ける?」
輝は、顔を上げずに頷くと、足に力を入れ自分で歩き始めた。


***


「ねぇ、今更なんだけど・・・」
歩き続けながらリアーネはぽつりと言った
「なに?」
もう自力で歩いている輝の袖を皺になる程掴んだまま、アールはリアーネの話を聞いた。
小走りをし続けて、アールの息は随分上がっている。

「港に向かって歩けって言われてまっすぐ歩いてきたけど、私たち港の位置を知らないわ」
すでに歩き続けて二十分は経っていた。

三人とも立ち止まり

「間違えてないかしら。真逆の方向に進んでたらどうしよう」
焦っているようには見られないが、内心物凄く不安なのか、逆に表情が無かった。

「そ、そんな。こんな森の中じゃ、真っ直ぐ進んできたかも、俺には分からないんだけど」
「今から戻るわけにもいかないし…」

「リアーネさま、お迎えにあがりました!」
聞き覚えのある声がすると思うと、数枚の木の葉を散らせながら現れたのは、リアーネ達の視界に飛び込んできたのはマニだった。

「ソルや婆には、リアーネさま達はもとの村へ戻って行ったと言ってあります。嘘だと気づかれる前に、マニに港町まで続く道までご案内させて下さい」

「それは、お前の兄弟や仲間に対する裏切りじゃないのか?」
ようやく口を開いた輝は、掠れた声でマニに言った。
「でも、藍ちゃんの件があってからは、ニダとミッド自体に裏切られた気分だ。あんな事、赦されない筈なんだよ、輝」
マニは、眉間に皺を寄せて問いに答えた。
「僕も、輝が仲間の元に戻れるように協力する。藍ちゃんもずっとそれを望んでたから。もう一度、僕にチャンスを与えて」
マニは、藍と過ごした短い間を思い出すようにゆっくりと言った。

輝は少し嫌な顔をしてから、マニの好きなようにさせた。

「ありがとう…さぁ、みなさんこっちです」



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