数分後、結局輝の話は聞かれないまま、従者を装った二人はソルとマニにただの村の子供とは思いにくい手際の良さと力で拘束され、老婆の家の地下牢に投げ入れられた。
「何でお前戻ってきたんだよー!」
「・・・そうだよ。もう諦めたかと思ったのにぃ〜」
牢の外から瓜二つの幼い顔が何か叫んでいるが、輝を除く二人には何がなんだか分からない。
訳が分からないまま、目の前の二人が縄で縛られるのを唖然と見ていたリアーネと、輝との間を隔てるように老婆が立った。
「えっと、どういうこと?輝・・・村に入ってから妙にだんまりなのと関係有りなの?」
いきなりの出来事で、リアーネは硬い笑顔で訊いた。
「・・・初めてここらの土地に来た時、勘で辿り着いたのはこの村だったんだ」
輝はフードを剥がされ腕をロープで後ろに固定されたまま、胡座を掻き言った。
項が見えるほど項垂れる輝を見下ろしている同じ声が二つ、言った。
「それが今更何の用だよ」
「リアーネ様が危ない所だったよぉ」
ギリッ・・
「俺は、俺は悪くない。藍を守ろうとしただけだ!藍を返せ!」
ソルとマニの言葉に、何かが切れ掛けた輝は渦巻くものに身を任せ叫んだ
「彼女の存在は、我々の生活の大きな助役になって下さっている。今更返すわけにはいかない」
老婆はキッパリと言い放った。
「・・・・・・藍・・・」
「ふん・・・」
萎んだ声を出す輝に向けて、老婆は吐き捨てるように言った
そのまま、老婆はマニだけを門番としてその場に残し、ソルとリアーネを連れて地下を出て行った。
リアーネは見えなくなるまで豹変した輝に驚いていたが、老婆の強い押しに負け、連れられていった。
その場には門番と力なく項垂れる輝と、うつ伏せのアールだけが取り残された
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