「・・なぁ・・どこまで行くんだ・・?」

その日は、森の中をズンズン進んでいく輝の少し後ろを、念の為とフードを深く被ったアールが慣れない足取りでヒョコヒョコと一生懸命に付いて行く姿があった。

「まだそんな歩いてねぇよ。気分転換にと思ったけど・・やっぱ止めた方が良かったか?」
後ろを気遣いつつも更に足を進めていく輝の手には大きめのカゴ。


「あそこにはとっても美味しい木の実があるのよぉ〜。今が丁度時期だから・・ねっ。折角人手も増・・・新入居者もいる事だしアキラに美味しいパイでもジャムでも作ってもらうわ!」
眼を輝かせ輝の少し前を行くリアーネは、いつにも増してはりきった様子だ。

((新入居者って言うのか・・・?というかそんなに食べたいんだ))
二人は同時にそんな事を思うが、ルンルンと鼻歌を歌いながらながら小走りで進むリアーネに掛ける言葉ではないと思った。

***

「あ、あったぁ!!」
不思議な赤紫色や、青紫色をした直径3,4センチほどのまん丸木の実が、5個ほど集まって実っているのをを指差して、リアーネは今まで以上に眼を輝かせた。

その声を聞き、すこし足取りの軽くなったアールは走ってリアーネの傍へ寄ってきた。
「これ?」

「これよ!」

「大きい・・・」

「あんまいのよ!」

「ふーん」
実感が湧かなくて、生返事を返す。
「・・・君ねぇー、この美味しさが分かっていない様ねぇ。」
リアーネは、アールの口に房の中の一つを半分ほど無理やり押し込んで、残りを輝の持つカゴヘ持っていった。

一口で食べるには少し辛い気もするその実を、誰にも見られない様に一旦口から出し、齧ってみた。
赤い汁が大きさに見合う分より少し多いぐらい出てきて、口内を甘く染めた。
苺の様な、葡萄の様な、マンゴーの様な。なんともいえない味。

酸味もあり、少し、独特な味がして、とても甘い、でも、飽きる甘さではない。

アールは大きな種がひとつ入っているのを左手の人差し指で穿り出し、残りを一気に口に入れた。

汁の滴りそうなその実を口に入れたままリアーネの元に走った。

未知の美味さに感動したその眼は、輝きながら、色々な感想を瞬時に彼女に伝えた。

「分かったら、たくさん集めてね」
とびっきりの笑顔で言うリアーネはニコニコしながら、アールにナイフを渡した。




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