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アールが一階に降りた時には既に3人分の食事と、その一人分の前に腰掛け二人を待つアキラの姿があった
並べられた料理は見た目からして美味しそうだ。
「遅いぞ!呼ばれた時にはすぐに来いよな!」
特に怒った様子は無いが、手にしてたフォークをアールに向けて命令するように言った。
アールはそれをまったく聞かずに、木製のテーブルに並ぶ料理を輝く瞳で見つめていた。
さぁさぁと、リアーネに腕を引っ張られ一人分の食事の前に腰を下ろす
輝はアールが席に着くとほぼ同時に、軽くあいさつを済ませ目の前の肉団子に手を出した。
リアーネもアキラの隣に座り、手を合わせてしっかり自然に感謝してから、トマトに木製のフォークを突き刺した。
アールは向かい合う二人を気にしつつ、目の前の食事を見つめる。
『危ないかも知れない・・・』
そんな思いも過ぎるが、空腹感に負けたまたま自分の好きな物があったので自然にそれに手が行った
しばらく夢中で黄色いスープを口へ運ぶ。
上品な甘さで、結構おいしい。
ミッドにもヘルのと同じ料理があるんだな・・
「ヘルから来たって言ってたわよね」
リアーネはサラダを大皿から自分の皿に取り分けながら尋ねる
「・・・あぁ」
もう隠すことも無いと素直に肯く
「・・ヘルで何かあったの?内戦があって一人逃されたとか?」
その問いには首を横に振った
「帝都から来たんだ。戦の話は聞いてない・・・・・・このスープ、おかわりってある?」
少し迷ってからおかわりを要求した
「帝都から、どうやって?」
リアーネが器を受け取り、今度はアキラが尋ねる
「・・ニヴルから、ミッドの、人目の着かない森まで、送ってもらった」
新しく注いで貰ったスープを飲みつつ答える
「ふーん・・・・誰に?」
更に問い詰める
「・・・・・・・俺の、先生の・・・部下?・・」
「先生の部下?・・もしかしてアール、貴族の坊ちゃんだったり?」
「・・・・・・・・・そんな、かんじ・・・フー・・」
悩みつつ、答えつつでも綺麗に二杯目の黄色いスープを飲み干したアールにリアーネは
「お肉も食べなね」
と言い肉団子を勧め。スープのおかわりもよそってくれた。
その後も色々な質問を何とか答えていったが、ここに来た理由は話す勇気が無かったのでパスした。
結局スープを三杯とサラダ一皿に肉団子を少しとその他諸々で胃を満足させた。
見た目通りどれもとても美味しかった。
が、作ったのが、家事全般ドンと来いとでも言いそうなオーラを醸し出しているリアーネではなく、あの少々乱暴そうな茶髪男だと知った時は、正直ショックだった。
しかも食事どころか掃除洗濯まであの男がこなしているなんて、二人の印象がずいぶん変わってしまった。
リアーネ自身、家事は出来ないのではなくしないだけだと言っていたが、ほんとの所どうなのか。
この日は、今朝いた部屋の隣の隣、アキラの物が置かれた部屋でアキラの隣に布団をひいて寝ることになった。
先日までの緊張が嘘のようだ。
ベッドでなくなって上手く寝付けなかったが、今の状況は悪くないものだと感じ、隣のアキラをチラッと見遣ってからもう一度布団を被り直した。
これからどうすれば良いだろう、特に行く当てがあった訳でもないし、ずっとここにいてもいつかはこの事実を厄介と思う者に見つかる、
・・二人にも迷惑が掛かる・・でも、一人じゃ何も出来ないことは十分分かった、と思う・・今はあの二人を頼るしかなさそうだし
本来のミッドに来た目的も、自分もそこまでハッキリとしたものではない。
いつか二人に話そうか。俺がここに来た理由・・。
ヘルの・・・現状・・・
そんなことを考えつつ、いつしか深く眠っていた。